甘え下手
きっと本当。

阿比留さんは多くを語らないけど、嘘はつかない人だ。


だって言ってたもん。

最初から「こんな俺が傍にいても比奈子を幸せにしてやれないかもしれないけど」って……言ってたもん。


あんなこと最初から言うなんて、今思えばバカ正直な人だと思う。


「じゃあひどいことって……?」

「比奈子を置いて優子さんのとこに駆けつけた」

「あ、あれは緊急事態だったからで……。ひどいこととは違うと思います……!」


顔を上げて否定したけれど、阿比留さんは私の肩口に顔を埋めたままだったから、彼の顔を見ることは叶わなかった。

その代わりポンポンと私の背中を優しくたたく。


「それなら比奈子も連れて行けばよかったんだ。なあ、比奈子」

「……はい」

「イイコにならないで。比奈子の本音聞かせて」

「……」

「ハンバーグって何?」

「……げ」
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