甘え下手
顔を上げた阿比留さんの表情が強張っていたから、たぶん私の言いたいことが伝わったんだと分かった。

だけど私は、私の言葉で最後まで言わなくちゃ。


「だから私、阿比留さんが電話で優子さんに『ハンバーグ美味かった』って言ってるの聞いちゃって、すごく嫌だったんです……!」


最後の方は勢いつけて叫ぶように暴露した。

自分の醜い心の内を。


「……ごめん。俺、マジで最低だな」

「もっと言えば、夜中に電話で二人が話してるのも嫌なんです。……私、心が狭いんです。自分で思ってた以上に」

「……いや、そうだよな。比奈子が普通。俺がおかしかった。ずっとマトモな恋愛してこなかったから」


「比奈子のこと恋愛偏差値低いなんてよく言えたよな」と阿比留さんは深くため息を吐きながら言った。

私から見ればスマートに女性を喜ばせる術を心得てる阿比留さんなのになんだか不思議な気がした。


けれどマトモな恋愛をしてこなかったと言ったところ。

それが真実なのかもしれない。


「違うんです……私が思ってること、ちゃんと言わないから。一人で恋愛ごっこになってるって」

「誰が?」

「さーちゃんが」


阿比留さんが脱力したようにふっと笑った。


「俺も沙綾に説教された」
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