甘え下手
「あ、あの飛び蹴りは大丈夫だったんですか?」

「さあ。まだアト残ってんじゃない?」

「ええっ!?」

「見てみる?」

「えっ、こ、ここで!?」

「じゃあ風呂で見る? 比奈子ちゃんのえっち」

「ちょ、そんなこと言ってません……!」

「……ふはっ」


いつものやり取りになってて、阿比留さんと顔を見合わせて吹き出した。


阿比留さんが目の前で笑ってる。

その事実に泣きたいぐらい安心する。


ずっと心細かったから。

阿比留さんももしかしたら同じなのかもしれない。


阿比留さんが私を強いって言ったみたいに。

私も勝手に阿比留さんのことを強いと思い込んでた。


そういう理想のヒーロー像を阿比留さんに押しつけたのは私の方で、それはさーちゃんにも指摘されたこと。

だったら阿比留さんのこと、責められない。


「後は?」

「後って?」
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