甘え下手
「もう比奈子以外の女の手料理は美味いって言わない」

「そんな……。お母さんの料理とかあるし、そこまで言い切られるのも困るというか」

「分かった。じゃあ、母親と比奈子以外の手料理は食わない」

「だ、だから極端なこと言わないでくださいってば! そんなの無理じゃないですか」

「そうか? じゃあ独身の女の手料理は食わない?」

「……阿比留さんに気がある女の人の手料理は食わない、にしておいてください」

「オーケー」


私がふてくされながらも本音を言うからか、阿比留さんは少し嬉しそうに見えた。


「後は?」

「も、もういいです」

「比奈子のこと強いとか弱いとか二度と言わない」

「……私、強くも弱くもないです」

「あぁ、一番弱いのは俺だな」

「そんなことないです。私を救ってくれたのは阿比留さんだったし、それに……」

「それに?」

「阿比留さんが強くても弱くても嫌いになったり、しません……」


さっきも「好きだから」って浜辺に叫んでたから、私の気持ちはバレてるんだろうけど、改めて本人を前に言うのは少し照れた。

阿比留さんはそんな拙い私の告白に、眉を下げて微笑みを見せた。
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