甘え下手
「あの、さーちゃんには蹴られたって言ってましたけど、お兄ちゃんには……」

「ああ、投げられた」

「……すみません」


やっぱりと思うのと同時に、この長身の阿比留さんを投げ飛ばすことができるなんてお兄ちゃんやるなあ、なんて思ったのは一瞬で。


「一回、投げられとけって言うから」

「……」


お兄ちゃん……。


「大人しく投げられて比奈子に会うお許しもらった」

「すすす、すみません。ホント」


「にーちゃんガンコ親父みたいだよな」って阿比留さんが楽しそうに笑うから、自分の家族を受け入れてもらえたんだと私も嬉しくなった。

お兄ちゃんもさーちゃんもある意味強烈だから。


「でも今にして思えばこれってさーちゃんの計画だったのかも……」

「沙綾が?」

「なんか文句言いつつも私が一人で旅行に行くように仕向けてたっていうか……。普段ならもっとバカにすると思うんですよね、彼氏との旅行に一人で行くなんて」


出かけ際にハッパかけられたのも気になるし。
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