甘え下手
長い懐石料理のコースは途中でお腹がいっぱいになってしまったけれど、満ち足りた気持ちで美味しいものを食べるのはすごく幸せなものだということを知った。

こんなにリラックスした気持ちは久しぶりだ。


だから一緒に温泉に入るなんて大胆な決断もできてしまったんだと思う。


「ああ、やっぱ広い風呂はいいな」

「マンションのお風呂に二人じゃ狭いですもんね……」


マンションで一緒にお風呂に入ったことも実はあるのだけれど、本当に狭くてほぼ密着状態だったから身体を見られる恥ずかしさは少なかった。

広いと開放感はあるけれど、その分落ち着かない……。


阿比留さんはいつもの阿比留さんで余裕のある表情で、ゆったりと温泉に浸かっている。

きっとこういうのにも慣れてるんだろうと思うと面白くない。


何が恋愛偏差値が低いだこのデビルめ……!


「こんなに広いのに何縮こまってんの?」


デビルさんがニヤニヤと意地悪な質問を投げかけてくる。


そんなの身体を隠すために決まってるじゃん……!

胸はもちろんぷよっとしたお腹だって見られたくないんだよ!


さっきいっぱい食べすぎちゃったもん……!
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