甘え下手
阿比留さんは軽い気持ちで言ったに違いないのに、真剣に考えてる自分が妙に恥ずかしくなって、ますます隠れるように縮こまった。

背中の方でお湯が動く気配がして、身体が緊張する。


ゆっくりと背中から抱きしめられて、私は緊張を緩和するためにふーっと大きく息を吐いた。



「今度は逃げないの?」

「……今度は変質者じゃないって分かってますから」

「俺のこと変質者だと思ったの? ひでえ」


くすくす笑いながら阿比留さんが身体に手を這わせてくる。

いきなりのことに驚いてその手を阻むと、しれっと「さっき触れてもいいかって聞いたじゃん」と言われてしまった。


「う、それとこれとは話が」

「どう違うの?」

「だってここお風呂ですよ……!?」

「じゃあ出る? で後でもっかい入ればいいじゃん」

「そ、そういう問題では……」

「じゃあどういう問題?」


若干、はしゃいでる阿比留さんとの押し問答。

どうやら私は勝てそうにない。


だってちょっと触れられただけなのに私の身体はキュンキュン鳴いている。

もっとこの人に触れられたいって。
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