甘え下手
相変わらず悪魔みたいな魅力を持った人。

だけど私を求めてくれていると思うと、すごく嬉しくなる。


最初は私のことなんて眼中にないと思ってたのに。

一晩、一緒に飲んだだけで。この先の人生で関わることなんてない人だと思ったのに。


そんな遠い世界の存在だった阿比留さんが、今は私にとってなくてはならない人になってしまっている。

人生って不思議だ。


櫻井室長に淡い恋心を抱きながらも、恋じゃないと指摘されていたあの頃。


確かにこんなにも心を揺さぶられて、涙が出るほどの幸せを感じたり、涙も出ないほど傷ついたり。

私に本当の恋を教えてくれたのは阿比留さんだと思う。


楽しいことばかりじゃなくても、恋を知らなかった頃の方がいいなんてもう思えない。

心を寄せ合う幸せを知ってしまったから。


阿比留さんの手がバスタオルを外せば、すぐに素肌同士が触れあう。

温泉でしっとりと温まった人肌が気持ちいい。


気持ちを言葉で、身体で伝える喜びを教えてくれたのも阿比留さん。
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