甘え下手
そんな彼はなかなか愛の言葉を言いたがらないのだけれども。


「……愛してるって言って欲しい?」


そういう意地悪なところさえも今は愛しい。


「いいです。阿比留さんの気持ちは分かってますから」


だってさっき聞いちゃったしね。


「なんか今日の比奈子ちゃん、余裕だな。こっちは余裕ないっていうのに」


余裕なわけじゃないのに、阿比留さんがムキになって責め立ててくるから、私は阿比留さんのいいように鳴くことしかできなくなった。

私が余裕に見えるならば、それは気持ちが満ち足りているからだと思う。


「愛してるよ、比奈子ちゃん」

「ふふ……。私も愛してます」


一緒に気持ちの高まりを感じて、一番近くに彼を感じて、この恋が成就したことを感じる。


私が幸せにしてあげるなんて強気なことを言っちゃったけど、やっぱり私に幸せをくれるのは阿比留さんだ。


「ずっとそばにいたい」

「いいですよ。もう離してあげません」


嬉しくて感極まってる時ですら、泣くのを我慢しちゃうのはもう私の性格だからどうしようもない。

だけどかすれた声で「誕生日おめでと」と囁かれた時にはさすがに感極まって泣いてしまった。


こんなに幸せな誕生日を迎えられるとはまさか思っていなかったから。
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