甘え下手
だけどお仕事モードの櫻井室長は、普段とはまた違った大人の魅力に溢れていて、私の胸キュン度も半端ない。

"比奈子ちゃん"じゃなくて"百瀬"なのが、またもどかしいけれども。


「違いますよ! 接待……、そう、接待のお店を探してるんです」

「ああ、取引先の? 百瀬、そんな仕事までしてるのか?」

「ええ、まあ」


本当は接待なんて、上司について行くぐらいで滅多にないけれど、ない仕事ではないので嘘はついてない。

阿比留さんを食事に誘うのだって、接待みたいなものだ。


「和食だったら、ひとついいところ知ってるけど」

「え? 本当ですか? 教えてください!」

「百瀬、鴨大丈夫か?」

「……鴨、ですか? 食べたことないですけど」

「そこ、鴨のコースが美味いんだ。一回、行ってみるか?」

「へ? ええっ!?」


ま、まさか一緒に!?


私が予想外に驚きすぎたのか、櫻井室長は困った顔で笑うと「声がデカい」と小声で注意してきた。
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