甘え下手
百瀬に世話になってるって言っても、私が櫻井室長のお世話をしてるわけもないから、百瀬って言うのは、兄のことを指してるのかもしれない。

ありがとう、お兄ちゃん……!


「おっ、比奈子ちゃん、いいコトあった~?」


遅れ気味でお昼休憩から戻ってきた参田さんが、私の顔を見て開口一番そう言った。

ヤバイ、顔が緩みすぎてる?


「やだなー、参田さん。いいコトなんてありませんよー」

「やだなー、比奈子ちゃん。その白々しさ。じゃあさ、この間のセミナーの報告書、比奈子ちゃんにまかせていい?」

「……じゃあの意味が分かりません。話繋がってません」

「まあまあ。比奈子ちゃんと俺はニコイチじゃん」

「意味が分かりませんってば」


確かに参田さんと私は業務内容が同じだから、参加するセミナーや出張はたいてい被っている。

連名で報告書を出しても問題ないと思う。


「参田さんもたまには書いてください」

「俺、今日、営業の課長について外に出るんだよ。部長命令で」

「……分かりましたよ」


確かに課長よりも商品の専門的知識を備えた参田さんが行った方が、売り込みにはなるだろう。

参田さんは新人だけれど、プレゼン能力の高さは部の誰もが認めている。
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