甘え下手
阿比留さんがコーヒーを買ったから、なんとなく一緒に休憩をする体(てい)になって、窓際のカウンターに並んで座る。


なんだこれ。


なんで社内一のイケメンと並んでココアなんて飲んでるんだ、私?

そもそも阿比留さんって怒ってるんじゃなかったっけ?


いや、違うか。

阿比留さんは怒ってないけど、さーちゃんがチューハイぶっかけてスーツ汚しちゃったから、姉の私は謝らないといけない立場で……。


いや、怒ってないならもうよくない?


「何ブツブツ言ってんの?」

「なんかもうよく分かんなくなってきちゃったんですよね」

「何が?」

「いや、実はですね」


って、悩みの元凶の阿比留さんに相談してどうする、私。

途中で気づいて言葉を止めてココアをゴクッと飲みこむ。


「櫻井室長のオトし方、とか?」


阿比留さんがククッと笑ってまた櫻井室長ネタでからかってくる。

私が慌てて後ろをキョロキョロと振り返ると、「誰か来たら窓ガラスに映るだろ」と目の前のガラスを指差された。
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