甘え下手
「いや、そんなんあるんなら教えて欲しいですけど、第一、阿比留さんに相談することじゃないですし」

「そうか? 男の意見のが参考になるってこともあるだろ?」

「……やっぱり阿比留さんって世話焼き? もしかして長男ですか?」

「なんでだよ。次男だし」

「そうですか。私は長女ですよ?」

「知ってるし。妹いたじゃん」


世間話みたいな感じで阿比留さんの情報が少しずつ私の中に入ってくる。

この間まで芸能人みたいに遠い存在の人だったのに。


なんか不思議な感じ。


ひとり暮らしで、お兄ちゃんがいて。

クールなのに、意外に世話焼きな一面がある。


第一印象より悪い人ではない感じ……かな。


「いや、だからって恋愛相談なんかできないし……」

「男なんて食事に誘って、部屋に連れ込めばイチコロだろ」

「え、そうなんですか?」

「据え膳食わぬは男の恥って、知らねえ?」

「……櫻井室長はそんな人じゃありません」
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