甘え下手
「ま、酔いつぶれるのは櫻井室長と行った本番のときにしな」

「櫻井室長の前で酔いつぶれたって、家に運ばれてお兄ちゃんに引き渡されるだけですよ~」

「そういや家に来たことあるっつってたっけ。どんな仲なわけ?」

「航太さんはぁ~、お兄ちゃんの友達で、ずっと昔から家に出入りしてるんです」


会社の人には秘密にしておこうとしたのに、酔った勢いでぺらぺらしゃべっちゃった。

でもまあ、阿比留さんなら口固そうだしいいか。


目の前の阿比留さんは、予想外の私と室長の関係に、さすがに驚いた顔をしている。


「じゃ、比奈子ちゃんの片想い歴って相当長いとか?」

「あ~、よく分かりましたね! 六年ですよ! もうすぐ六年!」

「その間、室長に女ができたりとか……」

「モチロンありましたよー。でもね、私と航太さんの関係はお兄ちゃんいる限り、切れないじゃないですか。そうするとあきらめつかないうちに航太さんが彼女さんと別れたりですね……」

「うーわー。比奈子ちゃん、重症だね。そこまで不毛な恋してるとは思わなかったわ」


む。

不毛な恋とまではこれいかに。
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