甘え下手
「私のことばっかりおせっかいしてないで、阿比留さんはどうなんですか!?」

「俺?」

「彼女とか、いないんですか?」

「べつにいないけど」

「裏で相当、遊んでるって噂は本当ですか!」


さあ、吐け。とばかりにテーブルをドンっと叩いてやった。

阿比留さんは「なんで急に取り調べノリだよ」と若干不機嫌そうにしながらも、答えてくれた。


「まあ、嘘じゃないんじゃねえ?」

「え……」

「えって何。そういう噂、聞いてたんだろ?」

「はい……」


確かに私は知っていたはずだった。

女嫌いの阿比留さんは単なる噂で、裏で相当遊んでる阿比留さんの方が本当なんだろうってこと。


それなのにこうして話してみるとすごくいい人だったから、いつのまにか脳内で勝手に、そんな人であるはずがないって変換かけちゃってたんだ。

だから私の心は筋違いだって分かってるのに、勝手にショックを受けた。
< 62 / 443 >

この作品をシェア

pagetop