甘え下手
「男が全部アンタの妹に惚れるわけじゃないだろ。視野が狭すぎ」

「だって、今までの好きな人はもれなくさーちゃんのこと好きになってました」

「それって何人?」

「二人くらい……?」


ハ、と馬鹿にされたように笑われて、自分の恋愛経験の少なさが恥ずかしくなった。

だって六年も櫻井室長に片想いしていたんだもん、仕方ないと思う。


「なんで愛しの室長は、妹の毒牙にかからないワケ?」

「さーちゃんに毒はありません。年が離れすぎてるからじゃないですか? 私のことだって、完全に妹扱いですし」


阿比留さんと話していて気がついた。

だから私は櫻井室長のことが好きなのかも知れない。


安心して好きでいられるから。


「私って片想いが好きなのかも……」

「それはモテない奴の言い訳だろ」

「モテる阿比留さんには分かりません……」


ちょっと拗ねたように言うと、阿比留さんは「比奈子ちゃんは恋に恋してるだけだろ」と笑われた。
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