甘え下手
お父さんのいないこの家では、お兄ちゃんが保護者代わりで、私と沙綾はよく説教をくらう。


「だけどそんなシチュエーションでもお持ち帰りされずに家に送られるのが、さすがの比奈子だな」

「……お褒めにあずかり、どうも」


要するにネギしょって歩いていてもスルーされる女だって言いたいんですか。

血縁関係は言うことがシビアだこと。


ムッとしてお兄ちゃんの隣をすり抜けて家に上がろうとすると、「さっさと風呂入って寝ろ」と背中から声をかけられる。

お風呂か、メンドクサイな。


このままメイクだけ落として寝ちゃおうかな。

だけど朝起きたらまた説教されるのもダルいしなー……。


そんな自堕落な心と葛藤しながら、リビングのドアを開けると、目の前に沙綾が仁王立ちしていた。


「わっ、さーちゃん。ビックリした」

「……どういうこと」


週末だというのに今夜は予定がなかったのか、部屋着でノーメイクの沙綾はかなり不機嫌そうに私を睨んでいる。


あれ、私何かしたっけ。

ぼんやりした頭で考えてはみたけれど、何も思い当たらなかった。
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