甘え下手
「そうか? 比奈子ちゃんもそろそろ彼氏ぐらいいてもいい年頃だろ? あ、俺から広哉にバレるの心配してる?」
「お兄ちゃんはべつに私に彼氏がいようがいまいが、興味ないですよ」
「そうか? 前に沙綾ちゃんの付き合ってる男が気に入らないとかで、沙綾ちゃんと大喧嘩してなかった?」
「お兄ちゃんはさーちゃん命ですから」
「あの時、結構沙綾ちゃんに影で相談受けたりしてたんだけどな。ま、結局すぐに別れちゃったんだよな、確か。比奈子ちゃんもよかったら相談乗るけど?」
「え……」
「俺、ちゃんと広哉じゃなくて比奈子ちゃんの味方するよ」なんて笑ってグラスを傾けている櫻井室長は、優しい瞳を私に向けてくれている。
だけど私は口の中の高級食材が急速に味を失ってゴムを噛んでるみたいな気がした。
私に恋人がいても、櫻井室長は全然平気なんだということも確かにショックだった。
だけどそれは頭のどこかで常に分かっていたことだったから。
今のままじゃ、私の想いは届かない。
沙綾が個人的に櫻井室長に恋愛相談をしていたという、私の知らない事実を聞かされて、それが私の背中を押したんだと思う。
私はまた水になった日本酒をゴクゴクと喉に通した。
「お兄ちゃんはべつに私に彼氏がいようがいまいが、興味ないですよ」
「そうか? 前に沙綾ちゃんの付き合ってる男が気に入らないとかで、沙綾ちゃんと大喧嘩してなかった?」
「お兄ちゃんはさーちゃん命ですから」
「あの時、結構沙綾ちゃんに影で相談受けたりしてたんだけどな。ま、結局すぐに別れちゃったんだよな、確か。比奈子ちゃんもよかったら相談乗るけど?」
「え……」
「俺、ちゃんと広哉じゃなくて比奈子ちゃんの味方するよ」なんて笑ってグラスを傾けている櫻井室長は、優しい瞳を私に向けてくれている。
だけど私は口の中の高級食材が急速に味を失ってゴムを噛んでるみたいな気がした。
私に恋人がいても、櫻井室長は全然平気なんだということも確かにショックだった。
だけどそれは頭のどこかで常に分かっていたことだったから。
今のままじゃ、私の想いは届かない。
沙綾が個人的に櫻井室長に恋愛相談をしていたという、私の知らない事実を聞かされて、それが私の背中を押したんだと思う。
私はまた水になった日本酒をゴクゴクと喉に通した。