甘え下手
部屋の隅に置かれた観葉植物はきれいに葉っぱをつけている。

男の人なのに、きちんと植物の世話してるんだ。


対面式のカウンターキッチンにはプレミアがつくような焼酎が整然と並んでる。

整頓されたきれいな部屋。


モスグリーンのソファが櫻井室長のあったかいイメージとマッチしている。

こうして見るとやっぱり知らない男の人の部屋で、櫻井室長のことよく知ってるつもりになっていただけで、たいして親しい仲じゃなかったんだなあと改めて思う。


ただの親友の妹だもん、当たり前か。


カチャリと寝室のドアが開く音がしたのでそちらを振り返ると、グレーのニットとチノパンというラフな服装に着替えた櫻井室長が姿を現した。

ぽーっとそれに見惚れていると、酔っていると思われたのか、櫻井室長はそんな私をふっと笑うと、ソファに隣に腰を下ろした。


二人掛けのソファは予想以上の密着度で、普段こんな近くに座る機会のない私は、のけぞり気味に肘掛に上半身をあずけた。


「で、どうしたの?」

「え? えっ?」

「何か悩みあるんじゃないの? よかったら相談乗るよ」
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