甘え下手
「え? えっと……」


すごい勢いで思考が回り出す。

そうだん、そうだん、相談……。


まさか阿比留さんにしたみたいに、恋愛相談を櫻井室長にするわけにもいかない。

櫻井室長のオトしかたを櫻井室長にご教授願うなんて、そんな滑稽な話……。


いや、でも、待って。

本人に聞いちゃえば、早いんじゃない?


こういう男の人はどうやってオトせばいいんですかー? って。

うん、名案じゃん。


「って、酔ってるだろ、私ー!」


ひとりノリツッコミでビシッと隣をはたくと、当然のようにそれは櫻井室長の腕だった。


「うん、酔ってるね。比奈子ちゃん」

「あわわ、ごめんなさい……」


優しい笑顔と、手の甲に感じるセーター越しの体温に、一気に顔の温度が上昇した。

櫻井室長に触っちゃったー!


「相談はまた今度にする?」


頭にポンと手を置かれて、頭の中にぽぽぽっと花畑が広がった。

無言でコクコクとうなずく。
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