甘え下手
思えば普段、自分のことをベラベラと他人に話したりはしないのに、入社初めての同期会で飲みまくったのが運のツキだった。

コイツが俺と競えるぐらい酒に強かったから、飲み会が終わった後もまた浴びるぐらいに飲んで。


気がついたら次の日の朝、コイツんちのマンションの床で転がってた。


二日酔いガンガンで記憶なんて全くないって言うのに。

仁はしっかり覚えていやがった。


俺はその中で、実家が歯医者をやってることや、兄が跡を取ってることなんかも話したらしい。


「優秀な兄キの下で虐げられてきた弟としては、可愛い妹の影に隠れる比奈子ちゃんに意地悪したくなっちゃうわけだ。子どもだね、お前も」

「……悪かったな」


――同族嫌悪。


あの子に対する最初の感情はまさにそれで、『卑屈』だなんて言ったのはあの子を通して自分を揶揄しただけに違いなかった。

むしろ、仲の良い姉妹を見て、そんなんねーだろって否定したかったって気持ちが強かったのかもしれない。


だけど妹は姉の代わりにキレるわ、姉は姉で妹の代わりに謝ろうとするわで、俺の思い通りに二人の間にあるドロドロした部分なんて見れなかったわけだけど。
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