甘え下手
***


そうやって冷静な自分がもう一人の自分をあざ笑うけれど、やっぱり気になるものは気になるから、俺は次の週から社内で百瀬比奈子の姿を探すようになった。

仁に聞けば彼女の様子ぐらいは探れるだろうが、変に鋭いアイツに勘ぐられるのも面倒くさい。


彼女は広報で外に出ていることが多いし、第一、俺自身が外回りしてることが多い営業だからして、彼女と会えるチャンスなんて実はそうそう訪れない。

昼休みの屋上、喫煙スペースであてもなく姿を探したりして、結局、休憩コーナーで彼女の姿を偶然見かけたのは、もう週も半ばを過ぎた木曜日だった。


「なにしてんの、比奈子ちゃん」

「……コーヒー飲んでますけど」


都合よく一人で窓際のカウンターに座ってる彼女の隣に腰を下ろすと、突然の俺の登場に驚きながらも受け答えをした。

パッと見、普通の表情で、落ち込んでるようには見えない。


ま、会社だしな。

さて声をかけたものの、どうしようか。


気になって探していたくせに、その後のことを全く考えていなかった。

黙る俺に百瀬比奈子は不思議そうに首を傾げて、いぶかしげな表情をしてる。
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