腐女子な漫画家に溺愛されチュウ!?
「なぁ、お前、メイド服着ろよ!!」
そして、現在に至る。
悪戯っぽく笑う岩動の口元にはギラリと犬歯が覗いている。
男の俺が、着るワケもねぇ。
だけど、断ったら確実にノされる。
どっちを避ける??
いやいや、俺がここまでのし上がって来たのは権力が欲しいからじゃねぇ!!
死に場所を求めてだろ!?
死に場所を求めた悲しき狼、善哉、ビビってンじゃねぇ!!
誰だ、今俺の事中二病とか言ったの!!!!
「どっちがいいー??隣のデブにも着せたんだけどー」
何処からか出したメイド服を両手に持ちながら、山口の方を指差す。
そこで、俺は初めて理解した。
山口の言っていた事は本当だと。
本当に、岩動に着せられたのだと。
「ゴス風とロリ風があるんだけどサ、」
などと俺に一応話し掛けているみたいだが俺は上の空。
すると。
岩動は、ハンガーのフックを腕にかけてワザとらしく手の平に拳を打ち付けた。
「あ!!ココじゃ着替えにくいのか!!その気持ち私もわかるぜ!!」
と、一人勝手に納得いって。
「ついて来て」
そう、短く言うと岩動はメイド服を持ちながらくるりと踵を返した。
そして、数歩歩くと、俺達がついて来ていない事に気がついたのか。
俺達の方を向いて。
「ほら、早く」
そう言うと、ふわりと笑った。
今までにないくらい優しい笑顔だった。
その瞬間、俺の胸は早鐘を打った。
どうしていいか分からず。
ゆっくりとついていく事にした。