腐女子な漫画家に溺愛されチュウ!?
時は変わって、日曜日。
俺とほたるは、とんぼ公園で待ち合わせをしていた。
おふくろの言っていた、小さな丘を確かめに。
公園、と言っても狭くなくて、木々と緑が広がる緑地のような所。
秋になると紅葉と桜の葉が一面オレンジ色に染め上げる。
それに誘われた、赤く染められたとんぼがよく現れる事からとんぼ公園だとか。
って、ちっせぇ頃おふくろに教えてもらった。
…やっぱり、久しぶりだ。
初めて自転車に乗ったのは、ぼんやり覚えている。
俺だけが、自転車にずっと乗れなかった。
兄貴も俺がその時ぐらいにはとっくに乗っていたらしいし、藍が先に自転車に乗れた事も知っていた。
山口も乗っていたし。
俺だけが、ずっと乗れずに、泣いていた。
何回も何回もとんぼ公園で練習して。
夕日が沈みそうになっていたって、気づかずにがむしゃらに練習していた。
何回目か、忘れた…というより、数え切れない。
その何回目かに、俺は派手にこけた。
買ってもらったばっかの自転車は気づくとドロドロで傷もついていて。
膝にはおっきい擦り傷ができていて、茶色い膝からじわりと赤黒いのが、滲み出ていた。
ふと周りを見渡すと暗い木の隙間がとぐろをまいているようだった。
急に自分が独りだって、気づいて。
俺は泣き出したをだったっけ。
何もできずにただただ泣いていたら。
おふくろが、あの優しい笑顔で来てくれた。
笑顔の中に、焦りと心配も混ざっていた。
俺は、痛みも忘れてとびついて、泣いた。
…そこから記憶は無い。
泣き疲れて寝たのか、自分の足で帰ったのか。
そんな事を思い出した。
「善弥、何笑ってんだ??」
一人でニヤける俺に、ほたるは眉を寄せながら俺の顔を覗き込む。
俺は、適当にはぐらかす。
「言えよ!!」
と、しつこく聞いてくる、ほたる。
周りから見たらバカップルに見えるのかな、なんて思っていたら。
また、勝手に口が緩んだ。
「また笑ってる!!気持ちワルっ!!!」
「うるせぇ!!」
けらけら笑うほたるを、追いかける。
俺達は軽く走りながら、はしゃいだ。
数メートル後ろには、山口達。
「…俺達、空気ッスか??」
そんな山口の嘆きも、俺達には届かなかった。
まだ青々とした草木だけが、山口の言葉を聞いていた。