撮りとめた愛の色
一緒に昼食をお邪魔させて貰った私は、縁側へと移動すると食後のお茶を口につけた。
「───取材、ですか」
冷えた麦茶が喉を潤せば、グラスの中の氷がカランと甲高い音を立てて隙間を埋めるように崩れる。
「まだ返事はしてないけどね。断ろうにも上手く躱される」
頷きながら彼は手を伸ばし、鞄からひとつの雑誌を手にとった。店頭でよく見かけるその雑誌はこの場所にはミスマッチで浮いている。
人気アイドルが表紙を飾る雑誌名に視線を落とせば、ふと記憶に引っかかりを覚えて彼に問いかけた。
「これって少し前に先生が賞を取ってインタビューを受けた人の?確か記事を読んだ気がする」
「おや、良く覚えていたね。凄い記憶力だ」
彼のグラスから、カランと氷が溶けながらぶつかる音がした。
「今の時期だと……七夕展についてとかの特集でも組むの?」
それはないだろうとは思いつつも少し早め早めに次の月に発行する刊行の編集に取り掛かるだろうし、時期的には遅いくらいなのかもしれない。
返事を濁した彼は少し困ったように首を振った。さらりと髪が揺れれば、陽を浴びて黒が抜けたように赤みがかっている。