撮りとめた愛の色
「それで桔梗はなにをそんな落ち込んでんだよ」
裏道を抜けて表の大通りに差し掛かったあたりで汰人が切り出したことに私は少し反応を遅れて返すと、汰人は苦笑交じりに「だからさ」と言い直す。
「夏祭り、んな行きたかったのかよ」
「ううんと、そういうわけじゃないんだけどさ」
「……お前が行きたかったのは先生と、だもんな」
「え?ごめん聞こえなかったんだけど…なんか言った?」
「いや?まぁ先生は仕方ねぇよな、先約あるんじゃ」
汰人の何気ない言葉にすら反応してしまって自然と視線も下がっていく。ふと頭にかかった重みに顔を上げれば汰人の手が私の頭に置かれている。
「桔梗暇だろ」
「へ、ええっと…夏祭りの日のことだよね。まぁ…うん?」
「じゃあ一緒行くか。土産買うんだろ?ついでに回ろう」
信号の赤で進んでいた歩みがふと止まり突然の提案にぱちくりと瞬きをしているうちに汰人の手は離れて、私はそれを見つめていた。
「嫌なら別にいいし、どうする?」
口を開こうとするよりもわずかに早く、信号機に表示された色が赤から青へ移り変わって汰人は足早に歩き出す。タイミングを逃してしまえば前を歩く背に声をかけづらくて開きかけた口をつぐんだ。