撮りとめた愛の色
横断道路を渡り切ったあたりで汰人は首を捻るように後ろを振り向く。歩みがほんの少しだけ遅くなったのは無意識なんだろうか。
「どうした?ここ危ねぇから早く来いよ」
「あ、うん。待って」
そうは言いつつも決して先に行こうとはしない汰人の隣に駆け寄って肩を並べる。
「まだ日はあるのに汰人は夏祭り私と行くってもう決めちゃっていいの?」
「ん?別にかまわないって。そんな考えんなよ。行きたいか、行きたくないか。桔梗からすればあの人の代わりとはかなり不十分だろうけどな」
「、そんなこと…!」
「ウソつくなよ、ばぁーか。」
少しふざけたような言い方はきっと私が断りやすいようにとでもしているのだろうか。
そんなことまで気遣わなくてもいいのに。
本人にその気はなくてもなんだかそんな言い方は、狡い。とさえ、思ってしまう。
「勝手に決めないでってば。…私行く、……し。汰人が良いなら」
言いだしたクセに何故か汰人はちょっとだけ驚いて私を見つめていた。なに、と首を傾げれば汰人は誤魔化すように視線を前へと滑らせた。
「とりあえず詳しいことは後で決めるか。」
「ん?嗚呼、そうだね」
汰人の足が止まる。そこはいつの間にか私の住むアパートの前まで来ていたようで、それに気づいていつものように鍵を取り出しながら汰人に声をかけた。
「じゃあまた月曜な」
「うん、ありがと」