撮りとめた愛の色




荻原貴明という名は様々な流派や雅号《がごう》の多い中、その書道の実力を若くしてメディアに良く取り上げられている。きっと今その名を知らない人はいないだろう。


年末年始の書初めの時期なんかは特に何かと引っ張りだこだし、依頼も数多く舞い込むらしい。

話題を呼んだ人気は何も若さだけではなく、彼の端整な容姿も起因していた。


「そうだ桔梗、大学はどう?」

「どうと言われても。人も多いし楽しくはあるけど、正直勉強が大変なだけとしか」

「そうかそうか、いやはや若いねぇ」

「もう、何言ってるの。まだ先生も若いでしょう」


そんなに歳だって離れてはいないのにしみじみと言葉を紡ぐのを見てむ、と抗議した私にくすくすと彼は余裕のある笑みを零す。


「それはもうすぐ三十路を迎える私に言う言葉かい?有難いね」


のんびりとした口ぶりに十分若い部類に入るでしょうに、と内心で漏らしながら冷めないうちに彼の淹れたお茶に口をつけた。


「あ、せんせ。出展する作品は出来た?」


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