うさぎの学習


ウチの問いかけに、
直樹は何も答えなかった。


ウチの中で、切れた糸が暴れ出した。


「直樹~こっち見てよ!何か言うてよ!
ウチのこと……一生離せへんって言うたやんか!
あれは嘘やったん?
結婚しよなって、言うてくれたんは嘘やったん?」


直樹は、相変わらず俯いたままで……
何で?


そこへ……聞きたくない声の持ち主、お母さんが割り込んできた。


「満月さん……
結婚は、子供を生む、生まない以前の問題です。
家柄があまりにも違い過ぎると、お互いに不幸が生まれるだけで、結婚って言うのは、バランスの取れた家同士がするものであって、男女の感情だけで成り立つものではありません。満月さん、わかりますか? 」


うううううっ……
涙が溢れてきて、ウチは手で拭いなから直樹を見た。


こっち見てよ、直樹……とウチは心の中で念じた、
今、ウチを救うのは、この世界で、あんたしかいてないんよ。


念力が通じた?
その時……直樹が上目遣いで、ウチのことをチラッと見た。



視線がやっと一致した。


と、喜びに溢れたのは一瞬の事で……
直樹はまたウチから視線を外した。


 
 
< 241 / 314 >

この作品をシェア

pagetop