嘘つきなキミ
圭輔とは3つ離れた姉弟。
16の圭輔は高校生だが、やたらしっかりとしている為に、楓自身がたまに妹のように感じてしまう。
そんな圭輔が、楓にとっては唯一の信頼できる男で、家族だった。
その圭輔と離れてまで、自分は今ここにいる。
『金と家が必要じゃないのか』
真っ青な空を見上げて、堂本の言葉を頭で繰り返した。
(家はともかく―――お金は、確かに必要だ)
楓はそう思って、ポケットから名刺を出す。
お金がなければ、圭輔はおろか、自分自身さえ生きていくことが出来ない。
しかも、まだ高校生の圭輔と共に、また生活を目指すのなら普通のバイトじゃ難しい。
遠く先に見える、静かな夜の街を見て思うことはやはり単純なことで。
ホステス、キャバクラ……そんな水商売を思い浮かべては、自分がその場にいる想像が到底出来ずに頭を振った。
まだ、居酒屋とかの方が――…それも考えたが、どうやっても自分一人生活するのに精いっぱいだろう。
お金は欲しい。でも、同じ空間に男がいるのは我慢できるとして、触られるのはいやだ。
“お触りなし”というところもあるらしいということは知っているが、でも、絶対に回避出来るかどうかはわからない。
行き詰った頭の中で、また思い返したのは堂本の言葉。
『ホストの方が、男嫌いにとっては都合いいかもしれない』
それは、どういう意味だったんだろう。
楓は昨夜、疲労と熱で、まともに考えもしなかった。
それを冷静になった今、考え始めた。