嘘つきなキミ
成宮―弟―
*
カーテン越しに光が射し込む部屋に、スースーと寝息が聞こえる。
ベッドに横たわって、ようやく眠りについた楓に堂本が布団を掛けた。
『もしかしたら、ここにくるかもしれない』
一連の話を、楓は寝る前に堂本に話をしていた。
楓の寝顔を見ながら、聞いた話を思い返す。
『今まで、なんとなく雰囲気がいやでした。そして、あの日――突然襲われたんです。
自分の家に、危険人物が居るってわかってても、逃げ場がなかった……。
圭輔が「実の娘になにしてるんだ」って助けてくれて……。
でも、その場から逃げ出す時に、あいつが言い捨てたんです。
「どうせ外でデキたガキだろ」って……。
私は意味がわからなかった。
でも、私の母親が浮気をしていて、その人との間に出来たのが自分ってことだと理解しました。
――本当かどうかはわかりません。
母は、既に他界してますから――』
そう話をしていた楓は、怒りや恐怖、悲しみを懸命に押し殺していたように堂本は感じていた。
「まだ19(ガキ)なのに――」
呟きながら、楓のさらりとした髪を撫でる。
どうにかしてやりたい。
一生傍にいて守ることは出来ないけれど。
それでも、こうして出逢って今を共にしている縁。
なにか、自分に出来ることは全力でしてあげたい。
そう思うのは――菫と重ねているからなのか。
堂本は楓の寝顔を見て、自問自答する。
「――違うな」
正直、10年以上経った今でも、菫の存在は大きく忘れることなど出来ない。だから逆に、菫を誰かに重ねるなんて出来る筈がない。
まだ、過去になってないのだから。
堂本は左手の時計を見た。
「7時前、か……」
時間を確認して、その場を立つ。
寝ている楓の顔を、じっと見て、それから静かに玄関を出た。
外に出ると、ドアに寄り掛かって廊下の窓から射し込む朝陽に目を細める。
そして目を軽く伏せて、胸ポケットから煙草を取り出した。
「……あんた、誰?」
その声に顔を上げる。
考え事をしていた堂本は、一人の人間が近付いていたことに気が付かなかった。
カーテン越しに光が射し込む部屋に、スースーと寝息が聞こえる。
ベッドに横たわって、ようやく眠りについた楓に堂本が布団を掛けた。
『もしかしたら、ここにくるかもしれない』
一連の話を、楓は寝る前に堂本に話をしていた。
楓の寝顔を見ながら、聞いた話を思い返す。
『今まで、なんとなく雰囲気がいやでした。そして、あの日――突然襲われたんです。
自分の家に、危険人物が居るってわかってても、逃げ場がなかった……。
圭輔が「実の娘になにしてるんだ」って助けてくれて……。
でも、その場から逃げ出す時に、あいつが言い捨てたんです。
「どうせ外でデキたガキだろ」って……。
私は意味がわからなかった。
でも、私の母親が浮気をしていて、その人との間に出来たのが自分ってことだと理解しました。
――本当かどうかはわかりません。
母は、既に他界してますから――』
そう話をしていた楓は、怒りや恐怖、悲しみを懸命に押し殺していたように堂本は感じていた。
「まだ19(ガキ)なのに――」
呟きながら、楓のさらりとした髪を撫でる。
どうにかしてやりたい。
一生傍にいて守ることは出来ないけれど。
それでも、こうして出逢って今を共にしている縁。
なにか、自分に出来ることは全力でしてあげたい。
そう思うのは――菫と重ねているからなのか。
堂本は楓の寝顔を見て、自問自答する。
「――違うな」
正直、10年以上経った今でも、菫の存在は大きく忘れることなど出来ない。だから逆に、菫を誰かに重ねるなんて出来る筈がない。
まだ、過去になってないのだから。
堂本は左手の時計を見た。
「7時前、か……」
時間を確認して、その場を立つ。
寝ている楓の顔を、じっと見て、それから静かに玄関を出た。
外に出ると、ドアに寄り掛かって廊下の窓から射し込む朝陽に目を細める。
そして目を軽く伏せて、胸ポケットから煙草を取り出した。
「……あんた、誰?」
その声に顔を上げる。
考え事をしていた堂本は、一人の人間が近付いていたことに気が付かなかった。