嘘つきなキミ

助ける理由（ワケ）

＊

「いっ……てぇな！」


リュウが去った直後に、３人の男相手に袋叩きにあっているケンは、みぞおちを抑えながら漏らした。


「まだ立てるほど元気なんだ？」


一人の男が、ケンの短い髪を掴んで顔を上げさせると、唾を吐いた。


「体がデカイ分、体力もそれなり――ってとこか」


そして、そのまま背中を壁に打ち付けられる。


（あーマジヤバイ。勉強なんか、こんなときまるで役に立たねぇじゃん！）


逃げ道を塞がれて、３人に囲まれている状況で、やけに頭の中は冷静にそんなことを考えていた。


あまり人通りがない場所を、リュウもまた上手く選んだものだ。
などと思いながら、通りに視線を向けた。

すると、一人の女性と目が合った気がした。


「オイ。よそ見してんなよ」


ケンの横を向いていた顔を、力づくで正面に向きなおされる。


「あの人……DReaMの人……?!」


その様子を通りからたまたま見かけてしまったのは、瑠璃だった。

ケンと目が合ってしまった瑠璃は、反射的に身を建物の影に潜めてしまう。

まさか、こんなところでドラマのような場面に遭遇するなんて、と、瑠璃は動揺した。

止めに入る勇気なんかない。
けれど、見過ごすことも出来ない。

パニックになった瑠璃は、警察の存在を忘れる。
唯一思いついたのが、楓の存在だった。


「――シュウっ……」


震える手を、カバンの中に入れようとした時だった。

向かい側から一人の女性が歩いてくるのに気付いた。
普段大学の人にすら話し掛けにいけない瑠璃は、この時は藁にも縋る思いで、その女性へと駆け寄る。



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