嘘つきなキミ
圭輔の呟きに、それぞれが心で何かを思ってるのか口を閉ざす。
そこに足音が近づいてきて、その音が3人の元で止まった。
「れ、レンさん!」
一番に声を上げたのは楓。
圭輔に支えられて立っているケンを見ても驚かないところをみると、レンもまた一連のことを知っているのだ、と楓は思う。
綺麗な薄茶がかった瞳を少し伏せて、レンが口を開いた。
「……この辺捜してたけど、ここに居たのか。一応無事、だったんだな」
足元から視線を上げ、ケンの顔をじっと見てレンは言う。
ケンは一瞬、レンはリュウや楓の正体についての事情を知っている人物なのかがわからなくて、何も答えられなかった。
その様子を見た楓が間に入る。
「レンさん、もしかしてまた、助けてくれたんですね……」
「あー……なんか嫌な予感がしただけだ」
「堂本さんの指示って、いつも言ってましたけど、それでもすごく嬉しかったし、助かりました」
楓の言葉を聞いて、ケンはレンも堂本同様、初めから事情を知っていたのだと分かる。
すると、安心した反面、自分だけが楓のことを知らなかったのかと複雑な気持ちになった。
「姉ちゃん、この人は……?」
「レンさん。ウチの店のNo.1」
「No.1……」
通りでオーラが違う、と圭輔は凝視した。
ケンと比べること自体、話にならないのだろうが、この世界を知らない圭輔でも、やはり何かが違って思えた。
少ししか顔を合わせていないが、あの堂本と同じ人間だ、と圭輔は感じる。
「じゃあ、あなたがケンさんに怪我させた相手を――?」
圭輔がレンから目を逸らさず言うと、レンは静かに首を横に振った。
楓もレンに注目する。
その視線を受けて、レンが口を開く。
「ケンを囲んだやつらはこれから話をつける。大体の目星はついてるから。
俺が今まで居たのは、リュウ」
「リュウ! そうだ! あいつ――――‼」
リュウという名を聞いて、ケンは、楓に手を出すようなことを仄めかしていたことを思い出すのと同時に頭に血が登る。
ケンが圭輔の支えを押しのけ、勇んで一歩前に出る。
それをレンがケンの肩に手を置き、冷静に制止した。
「どうせリュウはもう繁華街(ココ)には出入り出来ない」