嘘つきなキミ


(今頃あいつ、何してんのかなぁ)


営業中だが、平日だからかあまり客が来ない店にケンはいた。

端の方でポケットから携帯を取り出し、視線を落とす。

無残に割れたディスプレイ。
保護シートを使用してなければ破片が飛び散っていたくらいだ。

沈黙した携帯をしばらく見つめる。


結局、自分が家を出てから連絡も来なかった。

忙しい父や兄は、自分がいないことすら気づいてなかったのかもしれない。
母も、そんな忙しい父に気遣って、居なくなったことを言えないでいるのかもしれない。
弟は、きっともともと自分に興味もなかったのかもしれない。

けど、それを責める気にも、今はならない。

逃げだした自分が、家族をとやかく言う資格もない気もしたから。


「……ちょーどいいや!」


ケンはそう漏らして携帯をしまった。

こんな携帯(モノ)で、何かを期待しているような自分も本当は変えたかったから。
それならいっそ、こんなふうに壊れて、リセットした方がよかったのだ。

顔を上げたケンは、吹っ切れた目をしている。

もう少しゆっくり考えて、それからいろいろと決めていこう。

誰に言われるわけでもなく、誰に流されるわけでもない。
外の目も気にすることもせずに、自分自身が考える。

なぜ、今までそんな簡単なことが出来なかったのだろう。

少し前の自分を思い出して、苦笑した。


「世界は広いよなぁ」


店内を眺めながら、ケンは呟いた。


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