嘘つきなキミ


「リュウ、指名だぞ」
「ハイ」


楓のいないホストクラブDReaMでは、その日も変わらずに営業していた。

名を呼ばれたリュウは返事を返すとテーブルへ向かう。
そこにはこの間の女、絵理奈がいた。


「来たよーん」
「おー、待ちくたびれた」
「もう! それ、何人に言ってるの?」
「ひとり」


ホストの営業的な会話とも聞こえるものだが、やはり女(絵理奈)はまんざらではなさそうだ。
その様子を脇からケンが見ていた。

短めのワンピースから出る白い足を組み、ザックリと大きく胸元には高そうに光るネックレス。
腕時計や、指輪、ピアス…カバン…全てのものが有名なブランドもの。

しかし到底絵理奈がそんなに稼げるような雰囲気を感じることが出来ない。
恐らくは親のスネをかじっているんだろう。

ケンは世の中には色々な人間がいるものだ、と冷めた目で観察していた。


「おい、お前。ぼーっとしてないで灰皿換えたりしろよ」
「あ…っ、スミマセン…」
「ったく、センスねぇな」


リュウが急に一本の吸殻が入った灰皿を顎で指し、ケンにきつく言う。
ケンはそれに従い手早く灰皿を交換して、再び下がる。


「あれぇ? またこの人。最近見るー」
「おれの下についてる新人だからな。言ってなかったっけ?」
「んー聞いたような…?」
「ははっ、本当にバカだなぁ絵理奈は!」
「むー。バカって!」


顔を逸らして頬を膨らます絵理奈を、リュウは面白そうに笑って肩に手を回す。
そして顔を近づけて囁く。


「うそうそ。あ、でもちょっと抜けてる絵理奈みたいなオンナが好きだ」


その甘い声で、容易く絵理奈の機嫌は良くなって、そのままリュウの肩に頭を預ける。





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