嘘つきなキミ
過去に何かがあった。
それ故の、瞳と出てきた言葉。
『おれは繰り返してるんだな』
自分の話をしたからと言って、安易に堂本に対しても聞き出すことは出来ない。
けれど、堂本の秘めているものが何か―――それが気になるのも事実。
「……何か起こる前に、必ずおれに言え」
楓が堂本に真意を問うことに躊躇していると、先に堂本が口を開いた。
「…わかりました」
楓の素直な返事に少し安心したのか、堂本の表情はまたいつもと同じように…いや、楓にはそれ以上に柔らかく優しい笑顔に感じた。
「近い将来、楓がちゃんと歩いていけるようになるまで、おれが出来ることはするよ」
そう言って最後に遠慮がちに頭にポンッと一度手を置かれ、触れられていた手が離れる。
堂本の言ったことは、楓にとって物凄く嬉しい言葉。
しかし反面、その台詞は“保護者”的な意味で言ってくれているものとわかっている楓は切ない思いになっていた。
もう気付いている。
自分の中での堂本の存在位置が。
「あ…の、堂本さん」
「ん?」
ふと、今までこんなに男性に自ら近付いたことのない現状に気付いて楓はほんのり顔を赤くする。
その顔を隠すように少し俯いて楓が問う。
「その、リュウさんのことで…わざわざ…?」
「あー…まぁ、そう…だな」
「ケンから…?」
「いや……レンだ」
「れ、レンさん?!」
何故、レンが。今日の一連の時には居なかった筈なのに。
楓が驚いて顔をあげると、久しぶりに堂本と目が合う。
堂本は楓の目を見ると、少しその目を細めて言った。
「レンはああ見えて結構気ィ遣うからな」
楓は宙を見てレンを思い出す。
確かに、仕事をしている姿はそんなふうに映る。