嘘つきなキミ
「楓、未成年だろ」
「えっ!」
「なんとなくわかる」
「…なのに雇ってくれたんですか…?」
「…18以上なら大丈夫…と言いたいが、今の勤務時間帯ならアウトだな」
「だ、大丈夫なんですか」
「多少の危ない橋くらい、今まで渡ってきてるしそのくらいしねーと」
ははっと軽く笑いながら言う堂本を、楓はハラハラと見る。
そんな楓に堂本は可笑しそうに質問をした。
「ところで。楓は今まで店で酒、飲んだか?」
「え…と…」
「いい。正直に言え」
「……偶然にも、まだ…」
楓はその答えでどんな反応が返って来るのか想像がつかなく、上目遣いでドキドキと堂本の様子を窺った。
酒を飲んだ、と言えば未成年という事実から問題があるだろうし、飲んでないというのも仕事上どんなものかと心配する。
しかし楓の不安をよそに、堂本はニヤッと笑うだけだった。
「…あの…その笑いは…」
「“偶然”ねぇ」
「?」
「その辺が、レンのウデだな」
暫くは堂本の言ったことに首を傾げるだけの楓は、『もしかして』と、堂本を見た。
「まぁこれからも完全に飲ませないのは難しいかもしれないけど、嗜むくらいでイケるんじゃないか?」
「れ、レンさんが私に飲ませないように…?」
「おれは『あまり飲ませ過ぎないように』っつっただけだけど、まさかまだ一口もとはね」
ただの偶然と思っていた。
全てが堂本の計らいーーそして、レンの力だと知って驚愕する。
「そのレンからの“情報”だったもんだからな。リュウも頭キレる方だし」
「…ホストってただチャラチャラヘラヘラしてる人ばっかだと」
「ははは! ホストも色々だ! おれはそれに属するかもな」
「…絶対違いますよね?」
堂本の笑いにつられて楓も小さく笑った。
いつの間にか少し前の出来事の不安は消え、心が軽くなっていた。