嘘つきなキミ
「あ…す、すみません…」
楓が思わず謝ると、堂本は何も気にして居ないと言わんばかりに客席に座ると煙草を吸いながら言った。
「別に? ああ、外、ちょっとゴミ溜まってたから頼むな」
「あ、はい!」
堂本の指示に楓が瞬時にほうきを手にして店を出る。
ケンと堂本が二人きりになると、しばらくそのまま動かずにお互い黙っていた。
そして先に口火を切ったのは堂本だ。
「どうだ? 新しい家は」
「あ…まぁ、レンさんとこと比べられないっすけど…でも十分です」
「そうか」
その後の会話が続かない。
しかし堂本はそんなことも気にしていないようだったが、ケンはひとり何か落ち着かない様子で急に思い付いたように言った。
「あ…! 外、結構ゴミあるんですよね? シュウにチリトリとゴミ袋持ってきます、オレ!」
バタバタとケンは楓を追い掛けるようにその場を去る。
その様子を気だるそうに足を組んで堂本は見送った。
「…本能、か?」
ぽつりと堂本は言うと、天井に向かって紫煙をゆっくりと長く吐いた。