週末シンデレラ
気がつけば、ぼうっとするばかりで箸を動かしていなかったわたしを、美穂がじっと見つめていた。
「もしかしてまた、どうにかしてあげたいとか思ってるの?」
「あ……うん。メールしたら少しは元気になるかなぁ……とか、考えてる」
美穂は「やっぱり」と言わんばかりに大きくため息をつき、手に持っていたお茶碗を置いた。
「詩織の気持ちはわかるんだけど、わたしは失恋くらい自分で乗り越えろ、って思うな」
「それは、係長だってそうしようとしてるんだと思う。ただ、わたしがなにかできないかなって、思ってるだけだから」
声が弱々しくしぼんでいく。
自分が馬鹿みたいなことを考えているとわかっている。
落ち込んでいる係長を見るのは辛いけど、また“カオリ”という嘘をついても、もっと辛くなるだけだ。
「詩織が優しいのは知ってるけど、よく考えて行動するのよ。わたしは、詩織の幸せが一番なんだから」
「……うん、ありがとう」
美穂の言葉に曖昧に笑ってうなずき、わたしは箸を動かした。