週末シンデレラ


『……カオリさん?』

電話のコールが三つ鳴って出た係長の声は、少し怯えているように思えた。

「あ、あの……さきほど、お電話をいただいていたようなのですが」

バレないように高めの声を……と意識すると、喉に力が入って声が震えた。

『ああ……すまない。間違えて押してしまって……すぐに切ったつもりだったんだけど、そちらに繋がってしまったんだな』
「ま……間違えて……」

なんだ、間違えただけだったんだ。

予想していたことだったのに、なぜか残念な気持ちになる。

わたしは……係長になんて言ってほしかったんだろう。

自分の中の答えが見つからず、黙り込んでいると係長が口を開いた。

『本当に間違えただけなんだ。ちょっとスマホの電話帳を見ていて、あっ……べ、べつにきみに連絡を取りたいと思って見ていたわけじゃないんだ。本当に、会いたいとか思っていたわけでもなくて……って、俺はなにを言ってるんだ……』

電話越しに、係長が大きく息をついているのがわかった。きっと今ごろ、耳を真っ赤にしているんじゃないだろうか。


< 105 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop