週末シンデレラ


「ふっ……ふふ……」
『……カオリさん?』
「ごめんなさい。都筑さんがおかしくって……ふふっ」

係長がどんな様子だろうかと想像するとおかしくて、つい笑ってしまった。

「やっぱり都筑さんの言う通り、電話はダメですね。会いたくなっちゃう……あっ」

――なに言ってるのっ!

うっかり本音を漏らしてしまい、まだ会話の途中だというのに慌てて電話を切った。

ダメだ……なんで言っちゃったんだろう。ていうか、電話を切ったところで、聞かれているには変わりがないのに。

むしろ、動揺していることに気づかれ、本心であったことを悟られてしまう。

馬鹿なことをしたと思っても、今さら取り返しがつかない。

ワン切りの理由を聞いたときに、すぐに切るべきだったと後悔した。だけど、係長と話をしてわかったことがあった。

係長からのワン切りが、ただの間違いじゃなかったということに、ひどく喜んでいる自分がいる。

堪えようもない想いが、じわりじわりと溢れだしていた。


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