週末シンデレラ


ふたりとも同じ考えだったのがおかしくて、声をあげて笑い合う。そして、同時に「おやすみなさい」と言って電話を切った。

これからさきのことなんて、どうでもいいと思えるほど、温かな気持ちで心が満たされていく。

しばらく係長との会話の余韻に浸ったあと、麻子に電話をかけた。

麻子はちょうど仕事から帰ってきたところらしく、真剣に話を聞いてくれた。

『詩織、本気で好きになったってこと?』
「……そう、かも。係長の弱っている姿を見ると放っておけないし、力になりたいって思うの。……係長に嘘をつくのはよくないってわかってるけど、わたしじゃ……詩織じゃダメだから“カオリ”になりたくて」

昼休みにベーカリーショップへ駆けつけてくれたとき、入り口のそばにわたしがいたのに、それに気づかず“カオリ”を探していた。

その寂しさが、今もまだ痛いほど胸に残っている。


< 109 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop