週末シンデレラ
ふたりとも同じ考えだったのがおかしくて、声をあげて笑い合う。そして、同時に「おやすみなさい」と言って電話を切った。
これからさきのことなんて、どうでもいいと思えるほど、温かな気持ちで心が満たされていく。
しばらく係長との会話の余韻に浸ったあと、麻子に電話をかけた。
麻子はちょうど仕事から帰ってきたところらしく、真剣に話を聞いてくれた。
『詩織、本気で好きになったってこと?』
「……そう、かも。係長の弱っている姿を見ると放っておけないし、力になりたいって思うの。……係長に嘘をつくのはよくないってわかってるけど、わたしじゃ……詩織じゃダメだから“カオリ”になりたくて」
昼休みにベーカリーショップへ駆けつけてくれたとき、入り口のそばにわたしがいたのに、それに気づかず“カオリ”を探していた。
その寂しさが、今もまだ痛いほど胸に残っている。