週末シンデレラ
「癒し系っていうの? 美人といえば美人だけど、派手さはないわね。どことなく雰囲気が誰かに似てるんだけど、思い出せないのよねぇ」
遠目だったから、とりあえずバレずにすんだようだ。
しかし、これが隣の席で食事をしていようものなら、きっとわたしだと勘付いていたはずだ。
武田さん、人の噂話とか好きだから、すぐに広まるんだろうな……。
今回は“サトウカオリ”としてだから、あまり噂は広まらないかもしれないけど、もしこれが“加藤詩織”だったとしたら、みんなからどんな風に言われるだろうか。
今みたいに、陰で好き勝手に言われるんだ……。それだけじゃなくて、係長にも迷惑がかかるかもしれない。
そう思うと、少しだけ怖くなる。
「詩織……」
わたしの気持ちを察するかのように、美穂が心配そうな瞳を向けてくる。
「うん……わたしは、大丈夫だから」
なにが大丈夫なのか、自分でも言いたいことがわからなかったけれど、美穂を安心させたくて笑ってみせる。
正直に話すべきか、離れるまで騙すべきか。どうしたらいいのか、それもますますわからなくなってしまった。