週末シンデレラ
四章:告白と発覚
「今日はスカートなんだな」
係長と約束をしていた日。待ち合わせ場所に行くと、車の前で待ってくれていた係長が、わたしの服装を見て呟いた。
この前、パンツよりもスカートがいいと言っていたので、今日はシフォンのふんわりとしたスカートを履いた。
……変だったかな?
喜んでくれるかと思ったのに、渋い顔をされて不安になる。
「ど、どうですか?」
「丈が短い」
係長は似合っているかどうかではなく、ひざ上十センチの丈が気になっていたようだ。
自分でも慣れない丈は気になるけど、なるべく“加藤詩織”らしさから遠くなればいいと思って選んだ。
また、いつ誰に見られるか、わからないもん……。
だけど、係長を不快にさせてしまっていては、オシャレをした意味がない。
「……すみません」
「いや……いいんだ。他の男に見られるのかと思うと心配になっただけで……と、余計なことを言っているな。とにかく、気にすることはない。似合っているし、むしろかわいい……あっ、また余計なことを言っている」
係長はひとりでワタワタすると、しまいには額を押さえてうなだれてしまった。
必死で取り繕っている姿に、愛おしいという感情が湧き上がってくる。
“カオリ”じゃなければ、抱き着いて、好きだと言えるのに……。
笑うしかできないもどかしさに唇を噛む。最初から“カオリ”なんてやめればよかった。
今さらどうにもならない根本を後悔する。これほど時間を巻き戻したいと思ったことは、今までになかった。