週末シンデレラ
「今日は、あまり楽しくなかったかな?」
「そ、そんなことありません。どうしてですか?」
「きみが、無理をしているように見える」
係長は、わたしが無理に明るく振る舞っていたことに気づいていたようだ。
楽しくなかったわけじゃない。むしろ、一緒にいるだけで満足なのに……。
「あ……じつは、朝から体調がよくなくて。でも、もう大丈夫なので」
「なんだ、そうだったのか!? 無理はしないほうがいい。今日はもう帰ろう」
「ま、待ってください。ホントに大丈夫なのでっ」
係長はまだなにも頼んでいないのに、席を立ち上がる。わたしが慌てて引き止めると、彼は訝しげな視線を送ってきた。
「強がらなくていい。それともまた、俺の迷惑になる、とか考えているのか?」
「ち、違います。本当に、もう大丈夫なんです」
「本当に?」
「はい! 今なら、大盛りのオムライスが食べられそうです」
メニュー表に載っているオムライスを指差すと、係長はやっと納得したように腰をおろした。
「……わかったよ。けど、オムライスはやめて、もっと身体に優しいものにしたほうがいい」
「はい……」
係長が温かい飲み物が載ったページを開いたので、わたしはレモンティーを頼むことにした。