週末シンデレラ


「上川くんっ」
「おふたりの姿が見えたので、遊びに来ました」

Tシャツにカーゴパンツを合わせ、太陽の下にいる上川くんは、職場でいるときより爽やかに見える。

「おふたりって……お目当ては詩織でしょ?」
「もう、美穂。なに言ってるの」

冗談を言う美穂を咎める。

「バレてしまいましたか」
「か、上川くんまでっ」

つまらない冗談に、乗る必要なんてないのに……。

そう思いながらも、楽しそうに笑う上川くんを見て、心がなごんだ。しかし、なごんだのも束の間。

「あ、先輩が呼んでる。ちょっと、行ってくるね」
「あ……うん、いってらっしゃいっ」

ビーチバレーをしていた経理課の先輩が、選手交代と言って、美穂を呼んだのだ。

美穂が去って行くのを見送ると、わたしは上川くんとふたりきりになった。

「隣、座ってもいいですか?」
「ど、どうぞっ」

上川くんは話しやすいけど、場所が会社ではないからか、こうしてふたりきりになるとちょっとだけ緊張する。


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