週末シンデレラ
もしかして、上川くんは係長と家が近いのかな。駅が一緒だから、見られた?
緊張で喉が渇き、心臓がバクバクとうるさく音を立てる。
しかし、そんなわたしとは対照的に、隣にいた上川くんは、安心したようにホッと息をついた。
「でも、よかったぁ……」
「な、なにが……?」
「その女性が、とてもオシャレされていたんです。それなのに、服装とは似合わない、渋い紺色の傘を持たれていたので、てっきりデートの帰りなのかと思って……ですが、加藤さんじゃなくてよかったです」
「そ……そう」
「うわっ、気のない返事。加藤さん、ホント鈍いですね」
上川くんの洞察力に感心するばかりで、彼が大袈裟にリアクションをしてくれているのに、うまく笑えなかった。
それからは、美穂がビーチバレーから帰って来て、上川くんも営業部の人と釣りへ行った。
わたしと美穂はもう一度、島を歩き、一時間くらいしてから宿泊先である民宿へ戻った。