週末シンデレラ


もしかして、上川くんは係長と家が近いのかな。駅が一緒だから、見られた?

緊張で喉が渇き、心臓がバクバクとうるさく音を立てる。

しかし、そんなわたしとは対照的に、隣にいた上川くんは、安心したようにホッと息をついた。

「でも、よかったぁ……」
「な、なにが……?」
「その女性が、とてもオシャレされていたんです。それなのに、服装とは似合わない、渋い紺色の傘を持たれていたので、てっきりデートの帰りなのかと思って……ですが、加藤さんじゃなくてよかったです」
「そ……そう」
「うわっ、気のない返事。加藤さん、ホント鈍いですね」

上川くんの洞察力に感心するばかりで、彼が大袈裟にリアクションをしてくれているのに、うまく笑えなかった。

それからは、美穂がビーチバレーから帰って来て、上川くんも営業部の人と釣りへ行った。

わたしと美穂はもう一度、島を歩き、一時間くらいしてから宿泊先である民宿へ戻った。


< 172 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop