週末シンデレラ


「こっちの魚の煮つけはどうだ?」
「んー……これも味がしっかりついていて、美味しいです」

ついつい、部長に勧められるがまま食べていると。

「加藤さんは……よく食べるな」

隣にいた係長がポツリと呟いた。

「あっ……すみません……」

きっとわたしが近くにいることも嫌なはずなのに、隣に座ってバクバクと食事をされていたら、気分が悪いだろう。

箸を置いて、今度こそ席を立とうとすると、なぜかお寿司を差し出された。

「いや、よく食べる子は……嫌いじゃない」
「か……係長?」

驚いて係長を見ると、彼の耳は赤く染まっていた。

「な、なんでもないっ。ほら、お寿司を食べたらどうだ? デザートにシャーベットもあるから、溶けないうちに食べるといい。きみのお腹なら、まだ入るだろう」
「しっ、失礼です、人を大食いみたいに……。でも、いただきます」
「ほら……食べるんじゃないか」

係長はクックッと肩を揺らした。向かいに座っていた武田さんは、目を丸くしてこちらのやり取りを凝視している。

武田さんに、ますます敵対心を持たれたらどうしよう。そう思うのに、“カオリ”だったときのような、くすぐったい会話がすごく嬉しい。


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