週末シンデレラ
わたしの近くに座っていた部長は、何度も「うんうん」とうなずいている。
「営業一筋、三十年。やっぱり俺の目に狂いはなかったな。すでに都筑くんが心を許しているじゃないか」
「ゆ、許していません」
係長はまた耳をカッと赤くし、部長に食らいつくように反論した。
照れているのか、それともやはり拒否されているのか……そんな態度を取られると、係長の気持ちが余計にわからなくなる。
「それに……きっと、この子は嘘がつけないぞ」
「嘘……」
部長は根拠のない太鼓判を押す。胸がツキリと痛んだ。
そういえば、部長も係長の過去を知っているんだ……。
わたしがうつむいていると、係長がフッと息をついた。
「彼女は、嘘をつきますよ」
「っ……!」
係長の冷ややかな声に肩が震えた。目の奥が熱くなり、今にも涙が零れそうになる。
「都筑くん?」
わたしたちの事情を知らない部長は、小首をかしげる。
ダメだ……まだ、泣いちゃダメ……。
部長よりなにも知らない武田さんたちもいるのだから、泣いてはいけない。わたしは唇を噛みしめた。
「俺も……嘘をつきます」
「……係長?」
係長の様子をうかがうと、苦しげに眉根を寄せていた。