週末シンデレラ
「……あれ、加藤さん?」
「はい?」
ふと気づくと、武田さんがわたしの顔を訝しげに覗き込んでいた。この距離なら、眼鏡がなくても相手の顔が確認できる。
でもやっぱり眼鏡を……ん? 眼鏡がなくて、ウイッグをかぶって……しかもこの髪型……“カオリ”のときと似てる……。
「あっ……!」
武田さんには一度、“カオリ”のときに、係長といるところを見られていた。
しかも、そのあと給湯室で「どこかで見たことがある」と言っていたのだ。
今ので、完全に気づかれたかもしれない。
どうしよう……っ。ごまかさなきゃ、係長に迷惑が……!
そのことで頭が真っ白になり、なにもできずにいると。
「加藤さん、こっち」
「えっ? ……きゃっ」
ウイッグを取られ、急に誰かに腕を引っ張られた。宴会場の外へと連れ出されると、人がいない廊下へ連れて行かれる。
警戒しながら持っていた眼鏡をかけ、その“誰か”を確認する……と。